訪問看護3カ月

20140911_1a.jpg
→pixivで見る

先日、インターネット上に掲載されていた記事から、HSP…ハイリー・センシティブ・パーソン(Highly Sensitive Person)についての記述を見つけました。
とても興味深い内容だったので、まずはインターネット上に掲載されているテキストを読んで回りました。
いよいよ関心が深まってきたので、今度は実際に書籍を入手して読んでみました。
自身がHSPに該当するかどうかは分かりませんが、その内容は実に共感できるものでした。
読み進めるごとに、自分の中で未整理で取り残されていた様々な経験や思いが、どんどん整理されていくのを感じました。

僕はどうやら普通の人以上に周囲の物音などに敏感に反応してしまう人のようです。
幹線道路ですれ違う大型トラックが挨拶代わりにクラクションを鳴らす場面に遭遇しようものなら、心臓が止まるような思いをしたことは数知れず。
電車やバスに乗ろうとしますと、他に立ったり座ったりする場所がいくらでもあるにも関わらず、わざわざドアを塞ぐように立っている人に乗り降りを邪魔されます。
目の前でヒソヒソ喋りながらケラケラ笑う人なんかが居れば、いよいよ自分が馬鹿にされているような気分になります。
スマートフォン等が発するピコピコ音や、大音量のイヤホンから漏れ出るシャカシャカ音を鬱陶しく感じることも日常茶飯事。
車内をまるごとジャックしたかのような大声での会話や、泣いたり金切り声をあげたりする子ども等に遭遇することもあります。
仕方がないので降りる駅までひたすら辛抱しますが、こんなことが続くうちに電車やバスに乗ることそのものが苦痛になってきました。

ほっとハウスの中でも同じ。
耳元で大声を出されるのはもちろんのこと、他人を嘲って喜んでいる人の姿を見て、まるで自分が罵られたような気持ちになります。
台所横の勝手口から裏庭へ逃げ込むことも度々ありました。
周囲の人が発する好ましくない刺激…怒る・泣く・嘲る・支配する等の攻撃的な刺激…が僕の中にネガティブな感情を呼び起こします。
しかも、それがどこまでも付いて回るのです。
次にその場所を訪れようとすると、前回の記憶が生々しく蘇り、ドアを開けることすら恐怖になります。
一つまた一つと居場所は潰されていき、果たして自分の居場所は一体どこにあるのかと深い悲しみと憤りに暮れていました。

話は今年の春まで遡ります。
今から思えば、長年に渡って蓄積されてきた軋轢や無理が一挙に具現化した瞬間だったのかもしれません。
その日、母は2日に渡って不眠が続き、そして完全に歩けなくなったのです。
僕は真っ先に、母が30年に渡って飲み続けてきた統合失調症関連の薬を疑いました。
過去にほっとハウスでそういう事例を何度も見てきたからです。
父は精神科の薬を全部捨てるように言いました。
そんなことをすれば、離脱症状を引き起こして、さらに悲惨な結果を招くことでしょう。
やはり、ほっとハウスのメンバーさん(登録利用者)の方々の姿から、痛いまでに思い知らされているのです。

どうにか父を説き伏せて、その日のうちに母の通う精神科に赴き、眠剤を追加処方してもらいました。
その日を境に、母は確かに眠れるようになり、歩行も少しばかり回復しました。
ところが、今度は言葉での会話に不自由するようになりました。
そして容体は徐々に悪化し、再び歩行が困難になってきました。
目に見えて衰えていく母の様子を見て、父の不安と苛立ちは日に日に増していきました。
口調は厳しく乱暴になり、声を裏返して怒鳴るので、別の部屋に居ても声が響き渡ります。
その声が聞こえてくるたびに、内容は判らなくともネガティブな感情に支配されます。
僕自身もはや家の中に居ること自体が苦痛となりました。
しかし今の母を置いて家を出る訳にはいきません。
家で奮闘し、ほっとハウスで休息するという逆転生活に陥ってしまいました。

抑うつの診断を受けたのが2003年春、
抑うつの原因としてASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けたのが2010年夏のことです。
発達障害の特性として感覚過敏や感覚鈍麻があることは、最近になって知りました。
どうやら自分は感覚過敏の傾向にあるらしく、そのためにストレスを抱えやすい体質であるらしい。
そのことを、どうにかテキスト化して具体的に相手に伝えることができるようにはなりました。
幸い、現在のほっとハウスの施設長さんは、感覚過敏について理解を示してくれる方です。
そのおかげで、2016年夏から別棟の一室を「静かに過ごしたい方のための部屋」として使わせて頂くことができるようになりました。
ほっとハウスの裏庭で膝を抱えて座り込んでいた当時を思えば、まさに雲泥の差です。
本当に感謝です。

でもそれはあくまでも緊急避難。
本質的な解決にはなっていません。
家庭内で日ごとに膨れていく軋轢やストレス。
それらが情緒不安定の原因になっていることを、ほっとハウスでも受け止めてくださるようになりました。
医師の方でも投薬だけでは解決できない問題だと考えるようになり、他機関との連携を探るようになりました。
この後かなりアグレッシブな展開が待っていたのですが、むしろそれが契機ともなりました。
僕と母ともども訪問看護を利用することになりました。
最初、母担当のケアマネージャーさんから、某大手精神科病院が運営する訪問看護ステーションを紹介されました。
ところが、多忙のため「2週間に1回程度しか来れない」との返事。
ほっとハウスの施設長さんは、これでは十分な支援が期待できないと考えたそうです。
そこで、枚方市楠葉の地で独自で運営しているという訪問看護ステーションを紹介してくださいました。
打ち合わせに訪れた訪看さんは、母の様子を診て「週に2回来ないといけないぐらいの深刻な状態」とおっしゃりました。
この言葉にどれだけ救われたことでしょうか。
僕がこれまで抱え込んできた苦痛を、一番的確な言葉で表現してくださったのですから。

僕に対しての訪問看護は、自立支援医療受給者証を既に持っていたことから、すぐに始まりました。
母については、介護保険証しか持っていなかったために、1カ月遅れのスタートになりました。
ただ、その間も下準備を進めていましたから、自立支援医療の申請を受理されてからの展開は早かったです。
8月に入ると母担当の精神科医と連携が始まり、すぐに処方薬の再調整が始まりました。
母が(離脱症状を抑えるために必要な)入院を拒んでいたために減薬に消極的だった医師も、積極的に減薬を試みるようになりました。
すると、離脱症状を起こさない程度の速さで、順調に容体が回復していきました。
既にパーキンソン症を併発している疑いがあるため、完全な回復は難しいそうです。
それでも、自分の足で立てるようになり、歩行距離も徐々に長くなり、顔にも表情が戻ってきました。
それまで母を心配するあまりネガティブな感情が表立っていた父も、徐々に落ち着きを取り戻すようになりました。
それにつれて僕自身も、ネガティブな感情にさらされる機会が徐々に減っていきました。
今でも父の姿を見かけたり父の声が聞こえてきたりすると、過去の生々しい体験が蘇り、ネガティブな感情が誘発されます。
でもそれは、きっと父だけの責任ではありません。

HSPについて書かれた本を読んでいると、その中で敏感体質な人のことを「目の細かい網で漁をしているようなもの」と説明していました。
他の人では獲り損なってしまうような貴重な魚介類を漁獲できる代わりに、ゴミや危険物まで拾い上げてしまうという具合です。
危険やストレスを上手に回避する工夫がHSPの人にとっては重要だと記されていました。
周囲が敏感体質について理解を示してくれる人ばかりであれば良いのですが、世の中そんなに甘くありません。
自らの持論や経験則に固執してHSPという概念そのものを否定するような人も居ます。
さらにはHSPの人が特性として持っている「(無理してでも)相手に合わせようとする能力」「(痛みや苦しみに共感して)助けの手を差し伸べようとする能力」に心地よさを覚えて、気づかぬうちにHSPの人からエネルギーをどんどん吸い取ってしまうような人も居ます。
誤解がないように書き添えますが、そういう人の存在が悪いという意味ではありません。
そういう人と一緒に居ると、疲れやすくなったりネガティブな感情に支配されやすくなってしまうというだけのお話です。

敏感体質についての理解がない人の存在は、決してほっとハウスの中だけに限った話ではありません。
しかし、実際のところ「静かに過ごしたい人のための部屋」へ無遠慮に上がり込んで、ここへ逃げ込んでいる人たちに対してさらに追い打ちをかけるようなメンバーさんも居ます。
助けを求めても「彼の方が重度なんだから、あなたが我慢してあげなさい」とばかりに取り合おうとしない職員さんも現実に居られます。
専門的な支援を生業とする人たちの理解が追い付いていない現状は考えものですが、メンバーさんを含めた一般の方に無理解な方が居るというのは仕方のない話です。
自分が感じたことのない苦痛を理解することは並大抵のことではありません。
むしろ、そういう力に長けているのがHSPの特性の一つだと言っても過言ではありません。
HSPの特性を活かして福祉や医療の現場に従事されている方も大勢居られます。
そういう方が自分の担当になってくださったのならば、それは本当に幸運なことです。

皆が同じ感覚を持ち、同じ考えを持っていれば、全員が仲良くするのは簡単なことなのかもしれません。
でも実際にはそんなことはありません。
特に個人よりも組織を重んじる日本のような社会では、少数派は常に多数派に合わせるように強いられる傾向が強いのです。
少数派の犠牲の上に成り立つ「仲良し集団」というのは、果たして皆を幸せにするのでしょうか。
実は知らず知らずのうちに皆が我慢を強いられ、不満をため込んでいるのではないでしょうか。
全員が仲良くするなんて最初から無理な話なのです。
そんな幻想は捨てて、苦手な相手とは適当に距離を置き、相手の人格を尊重しつつ自分自身も守りながら上手に付き合っていく。
その方が、はるかに健全なのではないかと思えるのは僕だけでしょうか。

【参考文献】
「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本 HSP=敏感体質への細やかな対処法
著者:高田明和
出版:廣済堂出版
ISBN:978-4-331-52122-9

(※この記事へのコメントは、SNS上にて受け付けています。)

テーマ : アスペルガー症候群・自閉症スペクトラム
ジャンル : 心と身体

プロフィール

かずや(京ヤワ)

Author:かずや(京ヤワ)
河津屋京柔/かずや(京ヤワ)は、京都府下在住の東方好きなMacユーザーです。
昔は電車小僧。今は鉄道おじさん。多分この先も?
発達障害の一つ、ASD(自閉症スペクトラム)であることを知ったのは、40歳手前のことでした。
開き直るほどタフじゃないけど、生きるのが随分と楽になりました。
毎週日曜日にキリスト教会に通う程度には信心深いようです。
ちまちまとパソコンでお絵描きしたりしていますが、最近は寡作気味です。

FC2カウンター
カテゴリ
最新記事
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク